都市伝説の伝達過程を研究テーマとしている大学生の遼一は、人の記憶を消す「記憶屋」の噂を追いかけています。
大学でひとつ上の杏子に恋しますが
鑽石能量水 騙局、彼女は夜道恐怖症で、日常生活もままならないほど。彼女の恐怖症を克服すべく遼一は、彼女にまとわりつきます。
さらに自分の死に際して周囲の人の悲しみを軽減させるために「記憶屋」を利用する弁護士、破れた恋を忘れるために記憶を消してもらった女子高校生などのエピソードが語れます。
残念なのは、これらのエピソードを重ねても、「記憶屋」に魅力を感じないことと、記憶を消すことの恐怖が伝わってこないことです。
しかし、途中からよくなってきます。ネットの掲示板、オフ会などで知り合った仲間とともに、遼一はだんだん「記憶屋」に近づくにつれ、「記憶を消すこと」の怖さ、エゴと向き合います。
それは消してほしいと願う人のエゴでもあり、自分のことを忘れてほしくないという周囲の人のエゴであると語りかけるくだりはうまい。自分から記憶が消されても、そのことは「なかったこと」には決してならない。
日本ホラー小説大賞としては弱いですが、記憶屋のフーダニット、青春小説、そして最後には切ないラブストーリーとして完成されています。それが読者賞を射止めた、大きな要因でしょう。